【伝統工芸品のご紹介】~紀州漆器~
2019.03.26
伝統工芸品について
【伝統工芸品のご紹介】~紀州漆器~
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■歴史
紀州漆器(黒江塗)は、和歌山県海南市の北西部「黒江地区」を中心に生産されています。会津塗(福島県)山中塗・輪島塗(石川県)などと共に全国三大産地の一つです。
紀州漆器の歴史としては、室町時代紀州木地師によって渋地椀が作られたのが始まりだといわれています。これに加えて、現在の那賀郡岩出町にある根来寺で、僧侶達が寺用の膳・椀・盆・厨子などの什器を自ら作ったのも紀州漆器の起源の一つといえるものです。
昭和53年、通商産業省より「伝統工芸品」として「紀州漆器」が指定されるなど、和歌山県を代表する伝統産業として益々の発展を期しています。
■高級感があり華やかな職人技
晴れの日の道具として親しまれてきた漆器は、同じ価格帯の西洋食器と比べると存在感があり、見た目はとても華やかです。
漆器の表面に蒔絵が施されたものはさらに芸術的で高級感があります。
紀州漆器は他の産地にはない徹底的な分業制を進めており、それぞれの工程の職人技を手ごろな価格の製品にも反映しています。
職人の手により丁寧に仕上げられた漆器は、塗りのなめらかな手触りや素材のあたたかみが感じられ、普段の食事をワンランク上質なものにしてくれます。
≪深山浸潤(みやましんじゅん) ≫
木地を高温で焼いて完成させる技術のことで、熱い物を入れても十分に堪えられる器ができます。木地を焼くと細かなひびが入りますが、漆を充填(じゅうてん)することでそれ以上に割れることはありません。木地全体を焼いた後、炭化した部分を取り除きます。夏目・冬目の強弱で美しい木目を表現し、研磨して木地が完成します。木地に漆を浸透させ、夏目・冬目の線模様のグラデーションを作り、摺り漆をくり返すことで表面に深みのある艶となめらかさを増していきます。
※冬目(濃い部分)
※夏目(明るい部分)
≪瑞雲塗≫
瑞雲塗の独自の技法は、今では世界で唯一谷岡さんだけが継承しています。
色仕上げで鮮麗に研ぎだして仕上げますので、歳月を経るにしたがって鮮明で優雅な品位のある風合いを増していきます。
同じ模様の物は二つとなく、世界に一つだけのオリジナル作品となります。
≪根来塗≫
紀州の根来寺の僧徒によって日用のために作られた塗りもが始まりだといわれています。桧を刳り抜いて作られており、良質な天然漆100%だけを用いて作られ幾重にも塗り重ねて模様を研ぎ出し、一つ一つ丁寧に仕上げられています。
黒塗りの上に朱漆を塗ったものが多く、年月を経ると朱の面に黒い斑紋があらわれ、その独特の景色が珍重されています。
≪呂色塗≫
黒漆を塗り、塗り面を炭で磨ぐ手法で、塗り面を平滑にして深い光沢を出していきます。黒漆を塗った後、研磨・再度塗り・研磨と、いくどもこの工程を繰り返し、一般の漆塗りとは異なり刷毛あとは全く見られず、微細な塵埃の付着も許しません。また、下地は漆で固めていきますから湿気にも強く堅牢です。純黒の気品ある塗り膚と色沢は、他の塗料の追随を許さない品格と美しさを発揮します。
■製造工程
①採漆・製漆
漆の木の分泌物である樹液を刃物で傷をつけて、にじみでる漆液を採集
※一本の木に対して二十数回の採漆
採漆された生漆は加工して精製する
②木地工程
ある程度の大きさにカットした木端を水分がなくなり変形が生じなくなるまで放置する
※鋸やカンナを使って造形する
③下地工程
木地工程での素地の形状を補修・整備する
④上塗り工程
下塗り・中塗り・上塗りといった工程を経て、より堅牢(けんろう)で美しく仕上げていく
⑤加飾工程
塗り上がった品物に漆と本金を使って一つ一つ手作業にて綺麗に加飾していく